とある飛空士への追憶

あまりの評判の好さに手を出してみたのですが……。なるほど、好評も納得の一冊でした。

制空権を奪われた敵地のど真ん中から、次期皇妃候補を連れ、単機で敵中突破して本国に帰還せよ、というお話。

すべてを諦め、人生を他人事のように眺めていた(彼女の言葉で言えば、玻璃の向こう側の出来事だと感じていた)ヒロイン・ファナが、徐々に主人公のシャルルに心開いていく様子や、逆にシャルルがファナに惹かれていく様子がリアルに感じられて良いです。勿論、任務達成の暁には、ファナは皇子であるカルロに嫁ぐ身なわけです。生と死と隣り合わせの濃密な時間を共に過ごし、お互いに心通わせながらも、他の人に受け渡す為に飛んでいくという矛盾がなんとも切ない。

このまま二人だけで逃げてしまえば……そう考えた事は一度や二度ではないはず。それでも、自分たちを逃す為に囮となった仲間たちを、無駄死ににするわけにはいかない。空の上では身分なんて関係がないと信じているが故に、空で仲間を裏切ることができないシャルルに涙が出そうになります。すべてを放り投げて逃げ出せたら幸せだったかも知れないけれど、それができないところに、彼の実直さが表れています。

クライマックスは幻想的で綺麗でした。きっと、一生忘れなかったろうな。二人とも。

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